介護ビジネスで起業するには

今後の市場動向と業界

日本の高齢者人口は年々増加しており、2020年には、65歳以上の高齢者が人口に占める割合である高齢化率は30パーセントを超えると予想されます。
高齢化は、労働人口の減少をもたらすとともに、年金、医療制度の構造的な問題の解決、介護サービスの拡充など、多くの社会問題を提起しています。
一方、この動きに連動し、ますます比重が高まっている高齢者層のニーズを取り込むビジネスが活発化してきており、起業のチャンスが多い分野と考えられます。もちろん福岡でも、多くの企業や個人がこの分野に参入することが予想されます。

介護ビジネスの参入形態

 

介護ビジネスへの参入にあたっては、行政による許認可を考えると、株式会社、NPO法人、社会福祉法人等の多業種により参入することにメリットが多いと言えます。

つまり、法人格を持っていると行政から事業の許認可がなされメリットを享受する場面が多くなると言えます。

そこで、どの法人格を選択するかですが、ご自身の検討されているビジネスモデルを踏まえて、それぞれの法人のメリット・デメリットを比較して決めることが重要です。例えば、NPO法人については、認可までの時間がかかり、社会福祉法人については、設立条件が厳しいなど様々な諸条件を検討することが望まれます。

また、介護ビジネスの中身については、大きく分けて施設系と居宅系の2つに分類されます。施設系ビジネスの場合には、建物及び設備を準備する必要があるため、ある程度の初期投資の準備が必要になります。また、施設系ビジネスにおいては利用定員に上限があるため、ビジネスが拡大していくと一つの施設での限界は見えてきます。

一方、居宅系ビジネス、例えば訪問介護事業は自宅開業などで初期投資を抑えることができるとともに、ビジネス拡大も比較的容易であり、新規参入もやりやすい事業と言えるでしょう。

○施設系

・通所介護事業(デイサービス)

…通所介護は、一般的にデイサービスとも言われています。介護が必要な方をデイサービスセンターに送迎し機能訓練や日常生活訓練等のサービスを提供します。(その他放課後等デイサービスなどの形態もあります。)

・認知症対応型共同生活介護事業

…地域密着型サービス事業(市町村の指定)に分類され、一般的には、「グループホーム」と呼ばれることが多いサービスです。認知症の要介護者等に対して、共同生活の施設において行なう入浴・排せつ・食事等の介護その他の日常生活上の世話及び機能訓練を行うサービスを提供します。

○居宅系

・訪問介護事業(介護予防訪問介護事業)

…主に要介護者に対して、介護福祉士やホームヘルパーなどが入浴・排泄・食事などの介護や調理・洗濯・掃除などの家事、生活に関する相談・助言など日常生活の世話を行うものです。

・居宅介護支援事業

…主に要介護者などからの相談に応じ、要介護者の心身の状況や本人・その他家族の意向も勘案し適切な居宅サービス又は施設サービスを利用できるように、サービスの種類や内容などの居宅サービス計画を作成(これをケアプランと言います)する介護サービスです。

○その他

・介護タクシー

…は訪問介護等の介護保険と連動した形で運営する介護タクシーなのか、若しくは一般タクシー同様の利用者様を目的地まで移送するだけの介護タクシーなのかで要件等も異なってきます。人的、設備、法令順守、財務条件を満たす必要があります。(法人要件はないので、個人事業として開業可能です。)
(介護事業で会社設立される際の定款の目的については、こちらをご参照ください。)

 

 

事業展開のポイント

 

介護ビジネスのポイントとして、まず考えるべきものは「人件費」です。 介護ビジネスの推進にあたっては、正社員の雇用の他、多くのパート・アルバイトさんなどで構成されることが多く、雇用形態が多様化する傾向があります。
立ち上げる介護ビジネスの種類にもよりますが、訪問介護ビジネスにおいては、一般的に、人件費をおよそ60%前後にとることが、事業としての採算ラインと考えられます。
また、事業拠点(事業所)の立地・場所についても、もちろんサービスのしやすさも考える必要はありますが、多くの従業員の方々に通いやすい場所に拠点を設けることが重要と考えられます。

 

今後の展開

介護ビジネスの今後の展開について、高齢化の進展に合わせて、成長していく産業であると思われます。一方、介護分野に新規参入者も、異業種からも含めて急増しつつあり、競争は激化していくと考えられます。

こうした流れの中で、マーケットでの地位を早期に固めるためにも、各種施策で先手を打ちつつ、自社の財務体質や人事基盤を早期に強化していくことが肝要であると考えられます。そのためにも、事業計画や資金繰りなどについて十分な時間をかけて実施することが肝要と考えられます。